渋滞では、なぜ隣の車線ばかり進んで見える?

CRAFT WORKS TOKYO Journal 渋滞時の隣車線の錯覚
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都市高速道路で同方向の車が並ぶ複数車線の渋滞。写真:luigi alvarez / Pexels
写真:luigi alvarez / Pexels

 

さっきまで並んでいた車が、また右の車線で先へ行く。なぜ、いつも隣だけが得をして見えるのだろう。

結論

渋滞中に隣の車線ばかり進んで見えるのは、実際の車線ごとの速度差だけでは説明できない。車が詰まった交通では「追い越されている時間」のほうが「追い越している時間」より長くなりやすく、隣が常に進んでいるような印象が生まれる。1999年には、この錯覚を扱った研究が科学誌『Nature』に掲載されている。

もちろん隣の車線が本当に速い場面もある。大切なのは、目の前の数台の動きと、区間全体の到着時間を同じものとして扱わないことだ。

止まっている自分と、動く隣の車

高速道路の渋滞で、自分の車線はじりじりとしか進まない。右側の車線では、さっきバックミラーにいた車がいつの間にか前に出ている。そんなとき、少しだけ車線変更したくなる。

ところが移った途端、今度は元の車線のほうが進み始める。「あっちにいればよかった」と思った経験がある人も少なくないだろう。これは単なる運の悪さなのか。

理由は、速さではなく「追い抜かれている時間」にある

交通が混み始めると、車の間隔は一定ではなくなる。流れ始めた車列は車間が開き、止まった車列は詰まりやすい。隣の列がこちらを抜いていく場面では、その動きを比較的長い時間眺めることになる。

反対に自分の車列が隣を抜くときは、相対的に短い時間で何台かを追い越すことがある。通過した台数だけを数えれば同程度でも、体感としては「追い抜かれた場面」の印象が濃く残りやすい。

1999年に発表した論考は、両車線の平均速度が同じでも隣の流れが速く見える錯覚を、この追い越し・追い越されの時間差から説明した。


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「今、動いている車線」が最速とは限らない

渋滞は一定速度で流れるのではなく、進む、減速する、止まるを繰り返す。直前の数十秒だけを切り取れば、右の車線が速いことも左が速いこともある。

例えば隣の車線が20秒間よく進んだとしても、次の20秒で止まれば、長い区間での差は縮まる。ある瞬間の追い越しを「この先もずっと速い」という予測に伸ばしてしまうと、判断は外れやすい。

つまり、この錯覚を知ったからといって、すべての車線は同じ速度だと言い切るのも間違いだ。分岐、出口、車線規制などで実際の流れが異なることもある。

車線変更を繰り返すと、本当に早く着くのか

「隣が進んだら移る」を繰り返すと、目先の順位は入れ替わる。しかし、その入れ替わりが到着時間の短縮につながるとは限らない。車線を移った直後に流れが変われば、結局同じような場所で詰まることもある。

しかも渋滞中は車間が狭く、後方確認、合図、進路変更など、一回ごとの運転操作に注意が必要だ。無理な割り込みや急な車線変更は避けたい。出口や進路選択の必要がないなら、隣の数台だけを見て慌てて移る理由は薄い。

研究が示すのは、全ての進路変更が無意味だということではない。「隣のほうが速い」という直感が、正確な計測とは限らないという注意点である。


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CWT VIEW|渋滞で失っているのは時間だけだろうか

メーターを眺めても、距離が伸びない時間はある。それでも私たちはつい、自分より前へ出た隣の車を数えてしまう。何台抜いたかで、その時間の損得を測ろうとするからだ。

でも、渋滞の目的は競争ではなく、安全に目的地へ着くこと。右車線の車が何台進んだかよりも、前方の流れ、周囲の安全、出口までの位置を落ち着いて見るほうが、運転には役立つ。

「あっちのほうが早いかも」と思った瞬間に、この錯覚を思い出してみる。ほんの少し、ハンドルを切りたくなる衝動と距離を置けるかもしれない。

よくある疑問

渋滞では右車線のほうが速いのか?

必ずしもそうではない。区間や分岐、交通量によって実際の速度差は変わる。「隣が動いた」という短時間の観察だけでは、区間全体の速さを判断できない。

 

車線を変えると損するのはなぜ?

進路変更の直後に元の車線が進むことがあるため、損したように感じる。ただし車線変更そのものが常に到着を遅くするという意味ではない。

 

同じくらい進んでいても隣が速く見える?

見えることがある。1999年の研究が示したのは、平均速度が等しい状況でも、追い越されている時間の長さによって隣が速く感じられうるという点だ。

まとめ|隣の車線に、いつも正解があるわけではない

渋滞では「追い越された時間」が長く感じられ、隣の車線が得をしているように見えることがある。だが、短い時間の流れと区間全体の速さは別の話だ。

右が進んでも、左が止まっても、焦らず安全な車間を保って進む。車線の勝ち負けから少し目を離すだけで、渋滞の景色は違って見えるかもしれない。

EDITOR'S NOTE

執筆・編集:CRAFT WORKS TOKYO

渋滞の車線間速度の印象について、1999年の原著論考を参照し、論文の示唆と日常運転への解釈を区別して整理した。秒数の例は仕組みを説明するための想定であり、実走の計測値ではない。

確認日:2026年10月15日。CRAFT WORKS TOKYOについて

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