
同じ「CVT」でも、アクアやプリウスの中には変速用のベルトがない。
トヨタのハイブリッド車。写真は駆動方式のイメージ。
結論|電気式CVTは、ベルト式とは変速の仕組みが違う
トヨタのTHS型ハイブリッドに使われる電気式CVTは、動力分割機構とモーター・発電機の制御によって、エンジン回転数と車速の関係を連続的に変える仕組みだ。ベルトを掛けたプーリーの径を変える、一般的なベルト式CVTとは構造が異なる。
CVTは無段変速機を意味する呼び方であり、必ずしも中身がベルト式だとは限らない。「電気式」は、ベルトを電動で動かすという意味でもない。ベルト式CVTも電子制御を行うため、コンピューターを使うかどうかで区別することはできない。
ここでは、アクアやプリウスにつながるトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)の基本原理を中心に、ベルト式との違いを整理する。ハイブリッド車全般の走らせ方や、加速時の違和感は別の記事で扱っている。
ベルト式CVTは、ベルトが回る半径を変える
ベルト式CVTの中心には、入力側と出力側の二つのプーリーがある。プーリーとは、ベルトを挟んで回す滑車のことだ。向かい合う円すい状の面の間隔を変えると、ベルトが接する位置が内側や外側へ動き、回転を伝える実効的な半径が変わる。
入力側と出力側でその半径の組み合わせを連続的に変えれば、決まった段数を選ばずに変速できる。自転車で大きさの違う歯車を選ぶのとは異なり、ベルトが掛かる位置そのものを動かす、と考えるとつかみやすい。
ただし、「ベルト式には歯車がない」という意味ではない。前後進の切り替えや減速に歯車を使うほか、トヨタのDirect Shift-CVTのように発進用ギヤを組み合わせた方式もある。区別すべきなのは、主な無段変速を何で実現しているかだ。
THSの電気式CVTは、三つの回転の関係を制御する
THSの基本となるのは、エンジン、発電機、車輪につながる駆動側を結ぶ動力分割機構だ。中心にある歯車、その周りを回る小さな歯車、さらに外側の歯車を組み合わせた「遊星歯車機構」を使う。
初代プリウスの構成では、エンジンを小歯車の支持部であるキャリアへ、発電機を中心のサンギヤへ、駆動モーターと車輪側を外周のリングギヤへ接続している。歯数や歯の大きさを変えるのではなく、かみ合った歯車同士の回転関係を利用する仕組みだ。
この関係の中で発電機側の回転を制御すると、車速に対してエンジンをどの回転数で動かすかを調整できる。これにより、変速用ベルトと可変径プーリーを使わず、システム全体として無段変速の働きを実現している。世代や搭載車によってモーターの配置や減速機構は異なるため、初代の配置図をそのまま全車種へ当てはめることはできない。
ベルト式で変えるのはベルトが掛かる半径。THS型で制御するのは歯車でつながれた回転の関係。どちらも無段変速だが、その実現方法が違う。
比較表|同じCVT表記でも、中で動かしているものが違う
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| 比較する点 | ベルト式CVT | 電気式CVT〈THS型〉 |
|---|---|---|
| 無段変速の中心 | 金属ベルトと、幅を変えられるプーリー | 動力分割機構とモーター・発電機 |
| 調整するもの | ベルトがプーリーに掛かる実効的な半径 | エンジン・発電機・駆動側の回転関係 |
| エンジンの力の通り道 | 主にベルトを通じて駆動側へ伝える。発進ギヤ併用などの例外もある | 機械的に駆動側へ伝える経路と、発電してモーターへ送る経路を組み合わせる |
| 電子制御 | プーリーの油圧などを制御する | エンジン、モーター、発電機などを協調制御する |
| 名前から断定できないこと | 歯車がないこと、必ず同じ加速感になること | 全メーカーで同じ構造であること、整備が不要であること |
この表は構造の比較であり、燃費や耐久性の順位表ではない。実際の走りはエンジン、モーター、車重、制御の設定まで含めて決まるため、「電気式だから必ず上」「ベルト式だから劣る」と結論づけることはできない。
エンジンの力は、全部いったん電気になるわけではない
THSの「電気式」という名前から、エンジンは発電だけを行い、車輪は常にモーターだけで回すと思うかもしれない。しかし、通常走行では、機械的に車輪側へ力を伝える経路と、発電した電力でモーターを動かす経路を組み合わせる。
通常走行、強い加速、減速では、それぞれ動力と電力の流れが変わる。加速時にはバッテリーからの電力を加えてモーターが助け、減速時には回生によって運動エネルギーの一部を電気へ戻す。低負荷時などにモーターだけで走れる場面もあるが、発進すれば必ずエンジンが停止する、という固定的な動きではない。
だからカタログを読むときは、「CVT」と書いてあるかに加えて、エンジンと車輪が機械的につながるのか、モーターや発電機をどう組み合わせるのかまで見ると、愛車の仕組みを区別しやすくなる。
エンジンとモーターを組み合わせる駆動の個性を、愛車のさりげない目印に。CWTのHYBRID DUAL PHASE - SYNC x DRIVEは、その協調をテーマにしたカッティングステッカーだ。
よくある質問
ホンダの「電気式CVT」も同じ構造か?
同じではない。e:HEVも「2モーター内蔵電気式CVT」という名称を使うが、日常の多くをモーターで走り、高速巡航などではクラッチを介してエンジンを車輪側へ直結する。THSの遊星歯車による動力分割と、同じ図で説明できる仕組みではない。
ハイブリッド車なら、ベルト式CVTは使わないのか?
そうとは限らない。例えば初代エスティマ ハイブリッドは、ベルト式CVTを組み合わせた方式だった。「ハイブリッド」はエンジンとモーターを使う大きな分類であり、変速機の構造まで一つに決める名前ではない。
ベルトがなければ、オイル交換も不要か?
ベルトの有無から、必要な整備を判断することはできない。指定フルードや点検・交換の扱いは、その車両の取扱説明書とメンテナンスノートで確認する。メーカーもATF・CVTFの交換時期は車種や使い方で異なるとしており、一律の交換距離や「交換不要」をここで決めるべきではない。
変速ショックがなければ、全部同じCVTなのか?
滑らかに加速するという体感だけでは判別できない。諸元表の名称に加え、該当する年式・グレードの技術説明で方式を確かめる必要がある。構造を知ることと、乗り味の好みを決めることは、分けて考えたい。
まとめ|CVTの三文字から、変速の中身へ
ベルト式CVTは、ベルトが掛かる半径を変えて無段変速する。トヨタのTHS型電気式CVTは、動力分割機構とモーター・発電機の制御によって、エンジンと駆動側の回転関係を調整する。共通するのは無段変速という働きであり、その中身まで同じではない。
同じ表記でも、力の通り道をたどると設計の違いが見えてくる。「CVTだからこういう車」とまとめる前に、何を使って変速を実現しているのか。そこまで知ると、毎日乗るハイブリッド車の見え方も少し変わるはずだ。
執筆・編集と確認方法
執筆・編集:CRAFT WORKS TOKYO
車の機構・運転感覚・カーカルチャーを、愛車を理解するための読み物として編集している。
本稿はメーカーの技術解説、開発資料、公式FAQを照合し、ベルト式CVTとTHS型電気式CVTの構造差を整理した。走行試験や分解実測に基づく評価ではない。初代THSの原理解説と、車種・世代によって変わる具体的な構成を区別している。
情報確認日:2026年9月7日

イラスト:CRAFT WORKS TOKYO。カタログは比較を表す演出で、実在車の諸元資料ではない。


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